Research

ウミガメや鯨類に特異的に付着するフジツボ類、オニフジツボ超科に関する研究をしています。ここでは、これらのフジツボ類についてよくいただく質問を紹介します。

・ウミガメに付着するフジツボは普通のフジツボとは違うのか?

ウミガメやクジラに付着するフジツボ類は、分類学的にはオニフジツボ超科 (superfamily Coronuloidea)というグループにまとめられたグループで、いわゆる潮間帯で見られるようなフジツボ類とは別のグループとされています。

・なぜウミガメについているのか?

フジツボ類は、いわゆる三角形の富士山型の石灰質の殻と、その中に2対の蓋板をもっています。この蓋板は、乾燥や捕食者からの攻撃に備えたもので、動くことのできないフジツボが身を守るために重要なものです。オニフジツボ超科のフジツボたちは、この2対の蓋板が著しく退化していて、乾燥からも捕食者からも身を守る気があまり感じられません。

カメフジツボ Chelonibia testudinaria (オニフジツボ超科)と サラサフジツボ Amphibalanus reticulatus(フジツボ超科)

おそらく、ウミガメやクジラの体表にいる限りはヒトデのような捕食者はいませんし、またウミガメの産卵時以外に空気中に出ることもないので乾燥から身を守る必要もないからだと考えられています。クジラに付着するオニフジツボ Coronula diadema は、この2対のうち1対が退化して消失していますし、イルカ類のヒレに付着するエボシフジツボ Xenobalanus globicipitis は蓋板が2対とも完全に消失しています。

・フジツボの付着はウミガメの健康状態に影響しないのか?

フジツボ類が大量に付着することでウミガメの遊泳力が低下し健康状態が悪化する、また、健康状態が悪く動きのにぶいウミガメにフジツボが付着しやすい、といったことが言われています。しかし、これまで調査してきた中で、3000個以上ものフジツボに付着されながらも調査中元気に暴れて手の付けられないウミガメも見てきましたし、あまり関係ないのではないかと思っています。

・カメの種類によってフジツボの種類にも違いがあるのか?

アオウミガメにしか付着しないフネガタフジツボ Stomatolepas transversa や、少なくともアカウミガメ以外では見たことがないキリカブフジツボ Tubicinella cheloniae のように、特定のウミガメにしか付着しない種がいます。一方で、カメフジツボChelonibia testudinaria や サラフジツボ Platylepas heastylos はアカウミガメにもアオウミガメにもタイマイにも付着しています。このように、種によって特定のカメを好むフジツボがいるようです。その理由はよくわかっていません。

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