Shuto & Hayashi, 2013
Takuho Shuto & Ryota Hayashi (2013) Floating castles in offshore waters: the barnacles of two giant Fish Aggregation Devices from off Okinawa, Japan.Landscape and Ecological Engineering, 9(1), 157-163. (contributed equally)
博士課程の学費を稼ぐため休学し、沖縄に出稼ぎに行っていたときの内容です。お仕事中に大量のフジツボに付着された浮き漁礁(パヤオ: Fish Aggregating Devices)が水揚げされているのを偶然発見しました。この研究は、名護漁港に水揚げされたこのパヤオに付着する大量のフジツボを採集して持ち帰り、後輩と協力してその種を同定したものです。その結果、この大量のフジツボたちの中には日本でまだ確認されていない外来フジツボ Newmanella radiata が含まれていることがわかりました。
これまで外来付着生物は主に船底付着やバラスト水、温暖化による分布域の拡大などが主な要因とされてきましたが、漁具や海洋観測機器のような外洋の漂流物がstepping stoneとしてこれらの外来生物の分布域の拡大に寄与する可能性を指摘しました(その後糸満漁港に水揚げされたパヤオについても付着生物調査を実施しました)。
今後は原産地の集団と外洋のパッチ状環境に付着する集団の遺伝的な解析などを通して、外来生物問題における新たな侵入ルートのリスク評価などに繋げていきたいと考えています。
↑水揚げされたパヤオは付着生物などを全て落とし綺麗に掃除され、現在はモニュメントとして名護漁港の入り口に立っています。
この研究は沖縄県水産課、有限会社海邦無線、日本工営株式会社沖縄事務所の協力を得て実施しました。改めて感謝いたします。
【追記】
外来種 Newmanella radiataとして報告したこのフジツボですが、台湾と原産地で採集された標本が異なる遺伝的な特徴を持ち、また、蓋板と軟体部の詳細な観察からも形態的に区別できる未記載種であることが明らかにされました (Chan & Cheang 2016)。この論文で Newmanella spinosus として新種記載されています。
Cited by 4 papers (at 2019/3/22):
- Chan BKK, Cheang CC (2016) First discovery of a new species of Newmanella Ross, 1969 (Balanomorpha: Tetraclitidae) in the western Pacific, with a note on the new status of Neonrosella Jones, 2010. Zootaxa, 4098(2), 201-226.
- Hayashi R, Chan BKK (2015) New records and redescription of the Tetraclitid barnacle Tesseropora alba (Cirripedia: Thoracica: Tetraclitoidea) in the Pacific waters of Taiwan and Okinawa. Species Diversity, 20(2), 183-189.
- Rech S, Salmina S, Borrell Pichs YJ, García-Vazquez E (2018) Dispersal of alien invasive species on anthropogenic litter from European mariculture areas. Marine Pollution Bulletin, 131, 10-16.
- Sukparangsi W, Pochai A, Wongkunanusorn C, Khachonpisitsak S (2019) Discovery of Neonrosella vitiata (Darwin) and Newmanella spinosus Chan & Cheang (Balanomorpha, Tetraclitidae) from the Andaman Sea, eastern Indian Ocean. ZooKeys, 833, 1-20.